禅と日本文化 (岩波新書)鈴木大拙 ¥ 735 在庫あり。 ★★★★★ |
禅と日本文化 (岩波新書) | |
| 日本文化を代表する美術や武士、剣道、儒教、茶道、俳句の背後には「禅思想」という深い川が滔々と流れているということを、大拙氏は喝破した。本書は氏の深い洞察と地道な研鑚そして堪能な英語を駆使してなった稀有な書物であることは間違いない。欧米の読者が今なお読んでも決して恥ずかしくない胸を張れる書物である(最近こうした書物がないのは嘆かわしい限り)。また実際出版当時高く評価された。 単に情緒的、懐古的な日本趣味を海外の知識人受けを狙って書かれたものではなく極めて奥深い禅研究書となっており、人口に膾炙した軽薄なものではない。私たち現代日本人の背筋が伸び、無知を恥じるところも少なくない。日本語でしかも日本人に禅を伝えるだけでも簡単なことではないのに、それを英語でここまで明晰に思惟しえたことは驚嘆に値する。(意図的に直訳ふうに訳されているのがいいのかもしれない) 印象的といえばこんなところ。たとえば第四章「禅と剣道」で「無心」という絶対受動の心理状態になったとき、つまり心が惜しみなく他の「力」に身をゆだねるとき、本来の剣道の奥義に達することができるという。無意識という大海の大きな流れに身を... | ||
日本仏教史―思想史としてのアプローチ (新潮文庫)末木文美士 ¥ 620 在庫あり。 ★★★★★ |
日本仏教史―思想史としての... | |
| 文庫本にしては珍しい仏教史の本です。書き方は、かなり学術的な書き方で、まじめに学究的に書き込まれています。作者の個性というよりは、学問的な書き方になっています。仏教が日本に入り、定着していくにあたって、政治や日本の文化、習俗にどのように受容され、変質を受けたかを知ることで、日本の思想史を見ようとしていて、ユニークな本だと思います。本文の下には、脚注など豊富に載せられています。政治との関係、神道との関係も詳しいです。日本仏教の成り立ちについて、よくわかる入門書になっていると思います。仏教に興味のある人もない人も日本を理解するのに良い本だと思います。硬い本ではありますが、面白い本でした。教養として読む必要のある本だと思います。私は仏教につて葬式仏教程度しか知らない。 また日本史についても高校時代に習った程度の知識しかない。 この本はそういう私にもわかりやすく、インド、中国、日本への仏教の伝播とその変容を、飛鳥時代から江戸時代にかけてダイナミックに描いている。 日本の仏教諸宗派がどのような考え方の対立から誕生したのか、その歴史的背景は何か、神と仏の関係はどのように形成されたか、を語ってくれ... | ||
一日江戸人 (新潮文庫)杉浦日向子 ¥ 460 在庫あり。 ★★★★★ |
一日江戸人 (新潮文庫) | |
| タイトルに惹かれて読んだ者としては、必ずしも期待に応えてくれたとは言い難い印象が残った。 というのも、この”一日江戸人”というフレーズはあまりにも魅力を孕みすぎている。 事実、タイトルを払拭して考えれば、江戸の風俗、江戸人の気立て等々、決してその内容は希薄でない。さらにいえば、着眼点であろう”江戸の世界に浸かる”という方向に対し、ブレの無い記事がテーマ別に続いており、読者の探究心は満たしてくれる代物だろうと思う。 ともかくも、やはり掲げた旗が煌びやかでありすぎたのだろう。 出版側からすれば勲であろうが、読者の中には、本を手にとる前と比べて、読後感に多少気落ちする思いを禁じえなかった方も少なくないのではなかろうか。年配の男性に薦められて読みました。 この一冊でこの密度、本3冊は出せる内容ではないでしょうか。 文庫だからの手軽さはありますが、実際のところもっと大判で再販されたとしたら さらにお買い得ですよ。 早世されたのを残念に思います。著者の本は今回初めてでした。時代ものって結構言葉も難しいから、読んでいて眠くなってしまう。でもこの本は挿絵も適度に入っていてしかも可愛く、文章も... | ||
須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)須賀敦子 ¥ 998 在庫あり。 ★★★★★ |
須賀敦子全集 第1巻 (河... | |
| 須賀敦子の文章は癖になる。たまたま「本に読まれて」を手に取る機会があって、その文章の美しさに惚れ込んでしまった。その文業が、すでに文庫版全集になっているとは……。 デビュー作「ミラノ 霧の風景」と第二作「コルシア書店の仲間たち」が1冊になって、単行本未収録の「旅のあいまに」も入っていて、お買い得。 これから須賀敦子を買って読もうという人は、当然、この本から手にすべきです。 | ||
ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)須賀敦子 ¥ 914 在庫あり。 ★★★★★ |
ミラノ霧の風景―須賀敦子コ... | |
| 毎日新聞の2008年秋の読書週間の特集で、福岡伸一さんが良いと言っているのを読んで買ってみた。ほとんどの日本人にとって、ヨーロッパがはるか彼方のあこがれの地であった1950年代後半から1970年代くらいにかけての、著者のイタリアでの体験が静かに語られている。数メートル先が見えないほど濃い霧が出るミラノ、菩提樹の花の香りが部屋の中まで立ち込めるペル−ジャ、冬には海から突風が吹きつける詩人サバを生んだ海辺の町トリエステ、町全体が劇場と化してしまったヴェネチア。気負うことがない静かな文章で、著者の鋭い感性を通して、それらの町とそこに住む人々の日常が、淡々と回顧的に描かれていく。著者が街角で遭った小さなエピソード、親しい友人との集まりでの会話。わずか40年か50年しか経っていないのに、この本がなければ、誰にも知られることがなく過去の中に遠ざかっていっただろう。なんでこんなにも、それが心に残るのか。須賀さんのヨーロッパ全般(それこそ歴史も、またその経緯を含んだ文化)を紹介するというより、その場で生活してきた者として、その上20年近く以前の過去を振り返るというスタイルを貫き通す事で、温かみがあり... | ||
ヴェネツィアの宿 (文春文庫)須賀敦子 ¥ 560 在庫あり。 ★★★★★ |
ヴェネツィアの宿 (文春文... | |
| 「歩く」ということが印象に残った短篇集。ヴェネツィア、イタリア、神戸。そしてシャルトル巡礼。 最後に収められた二つの作品が、とりわけ素晴らしい。『アスフォデロの野をわたって』と『オリエント・エクスプレス』。静謐と哀しみ。誰にも止めることができない、時というものの流れ。 全篇を通じての優美な文章は、まさに珠玉。 日本にいる家族との物語の間に、ヨーロッパ時代の回想が挟まっているという、やや凝った構成。決して時系列に並んでいるわけではないが、全体として不思議な一体感とまとまりがあり、筆者の力量を感じずにはいられない。ヨーロッパ時代の回想の中にも印象的なものはたくさんあるが、全編を読み終えて、強く印象に残ったのは、やはり今は亡き父への尽きせぬ愛情。自己中心的な父親に強く反発してはいても、それと同じぐらい父親に魅かれている筆者がそこにいる。ラストの「オリエント・エクスプレス」は虚構を匂わせるところもあるが、こに描かれた父への思いは真実なのではないだろうか。須賀敦子さんの数少ないエッセー集の中で私が最も好きなのがこの「ヴェネツィアの宿」。イタリアでの話よりも、子供時代、聖心系列の学校での戦時... | ||
百物語 (新潮文庫)杉浦日向子 ¥ 860 在庫あり。 ★★★★★ |
百物語 (新潮文庫) | |
| この本のハードカバーを持っていますが・・・ 読後に怪異に逢いました。 柔らかな語り口なので怖さはそれほどでもありませんが、 後からじわじわくるものがあります。 ぜひあなたの本棚に入れてください。 たまに、思い出したように読むにはとてもいい本ですよ。 マンガの域を超えてます。世に百物語は数あれど、その白眉がこの短編漫画集である。 漫画と侮ってはいけない。 杉浦日向子氏の漫画はどれも小説さながらの叙情をたたえ、我々にその時代の空気を清々と感じさせてくれる。我々がかつて確かに知っていて、そして今はもう失ってしまった心の在り方すべてを、その絵を、言葉を、物語を通してもう一度取り戻してくれる。 杉浦版『百物語』に出てくる『恐怖』の正体は、卑小な人間の暗い感情でも歪んだ怨念でもなく、人間の理解を超越し、人間の歴史と関係なくそこにあった超自然のものたちである。 ずっと昔から人間のすぐ傍にいて、時に人の目に触れたり、障りを起こすために『怪異』として畏れられてはいたが、人間自身もそれらが悪意を持たぬ純粋な存在であることは肌で感じていたに違いない。だからこそ当時の人たちはそれらを『駆逐すべき敵』ではなく... | ||
須賀敦子全集 第2巻 (河出文庫)須賀敦子 ¥ 1,050 在庫あり。 |
須賀敦子全集 第2巻 (河... | |
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木をかこう (至光社国際版絵本)ブルーノ・ムナーリ ¥ 1,500 在庫あり。 ★★★★★ |
木をかこう (至光社国際版... | |
| とってもシンプルな本です。 木の書き方を教えてくれます。 ただ、それだけです。 でも、なにか深〜いことを教えてもらった気がしました。 木の法則(表紙の絵)には、感動して しばらくジーっと見入ってしまいました。最高です。初めて読んだ時身震いしました。他のどんな本とも違う。 木を使って、デザインの全てを簡単に分かりやすく しかも子どもにも絵でみてわかるようになっている。 全て基本があり、基本は崩さずとも、少しアレンジするだけでこんなに変わるんだ、という驚き。 デザインの本のようですが、人生論にも深く通じるところがあると思います。デザインを勉強する人だけでなく、子どもにもぜひぜひ 詠んであげてほしい本です。 大人も満足するし、驚きや発見があること間違いないと思います。おとなにもこどもにも楽しい本でした。描画指導での導入に使ったところ、子供たちの目がキラキラ…。しばらく木の観察がブームになりました。二冊買って一つは友達へのプレゼントにしました。この本には、とてもシンプルな言葉でとてもシンプルに 少しの描写だけで完成された思想が描かれていると思いました。そういうところが、ムナーリのデザインした... | ||
日本的霊性 (岩波文庫)鈴木大拙 ¥ 693 在庫あり。 ★★★★★ |
日本的霊性 (岩波文庫) | |
| 霊性というと、幽霊のようなイメージを持ってしまうが、ここでいうところはスピリットあるいは精神、主義というようなものであり、無意識の中にある日本人の特性を浄土思想から問うものである。 この浄土は、本来的に仏教が最初に求めた思想であるが、インドでは廃れてしまい、中国では子孫繁栄の思想から形式のみの受け入れにすぎず、日本の風土と歴史から初めて定着したと説く。 若干強引な気もしなくもないが、日本人の精神構造を説明する一つのツールとして読んでおくことを勧める。 親鸞が鎌倉時代に「発見」したものは大地であると、鈴木大拙氏は言う。それは平安時代における天上性の対置である。大地性と天上性が交わるところに地平の中心なき中心を有する「無限大円環性」(P133)のパラドクスがある。「個己」と「超個己」の矛盾的自己同一(あらゆるところに中心があって中心はない)がある。こうしたパラドクスが宿す大地と天上の、いわば連続性と断絶性の無分別知こそが日本的霊性の骨格かなと、評者は見る。禅が地平に特化した意識化であるとすれば浄土思想は大地に特化した意識化なのかもしれない(もっと大拙氏の思想に踏み込んでみないとわからない... | ||
無心ということ (角川ソフィア文庫)鈴木大拙 ¥ 740 在庫あり。 ★★★★★ |
無心ということ (角川ソフ... | |
| 本書の目次の字面だけを一見して、これは!と心躍るものがあったので買ったが、間違いはなかった。講義録なので初学者にもわかり易いといえばわかり易いが、すんなり無心の何たるかを会得できるかといえば、これが曲者である。だから座右に置いて何度もこの書に向かうことが大事だろう。読むたびに違う光が宿る。それほど仏教の核心を衝いた書だと言える。「無心の理論は、実に仏教思想の全体系を構成しているといってよい。」(P217)と大拙氏は断言する。評者は、無心を一言で要約することなど無謀を承知の上で言うと、無心とはけっして図にならない地である、ととりあえず言っておく。この地の上に、森羅万象ありとあらゆる現象という図が浮き出てくる。この図は地と表裏一体をなしている。だから無心といっても心そのものでないし、精神の中にもない。かといって心の外にある実在でもない。無でもないし、実体でもない、ましてニヒリズムとも無縁である。あらゆる二元対立を超え、生死にも属していない。さらに霊感的なトランス状態を言うのでもなくキリスト教的神人合一の直観的神秘主義でもない。 我々人間には、すでにそこにあるのだが、そこにあることを知る... | ||
百日紅 (上) (ちくま文庫)杉浦日向子 ¥ 714 在庫あり。 ★★★★★ |
百日紅 (上) (ちくま文... | |
| 北斎を描いた作品。大変よく勉強した跡が伺えて評価できる。また、コマとコマとの間が独自のテンポなのも良い。 各編は短いが再読に耐ええる程の濃度がある。 百年先にも残って欲しい大人の古典作品。 このタイトルは、 「散れば咲き 散れば咲きして 百日紅」(加賀千代女) から取られたものだそうです。 散っても散っても見事に咲いている百日紅。それは、百日間も続くそうです。 そうした百日紅の凄さ、逞しさに加賀千代女は感嘆し、杉浦日向子は江戸の偉人葛飾北斎を見たのです。 類稀な才能を持ち、その人物の大きさで、世間をあっと言わせていた北斎。確かに、そこには大物としての凄さを感じます。 そんな北斎を作者は、周りの人々、中でも娘のお栄とのかかわりあいの中に丁寧に描いてゆきます。 その表現は、江戸風俗のプロの描く見事な背景の中で、北斎の精神が躍動しています。 大雑把なようで綿密な北斎の言葉や行動は、その人物の大きさを感じさせます。 彼女の代表作かも知れません。登場人物すべてに「あぁこれが”粋”ってやつなんだね」と思わせる見せ場があり、 読み進めるうちに、その憧れから作中世界に思わず... | ||
新編 東洋的な見方 (岩波文庫)鈴木大拙 ¥ 798 在庫あり。 ★★★★★ |
新編 東洋的な見方 (岩波... | |
| 三部立て、全35編、新聞や宗教雑誌等からのアンソロジーである。ほぼ晩年の作品が詰った一冊。1966年8月大拙96歳の遺稿も収められているエッセイ集である。 一言で言い表すなら、「仙人」の自由闊達さの境地であろうか(笑)。1950年60年台という時代背景もある、仏教の衰退時期でもある、科学技術の台頭もある、生活の激変もある。閉塞感が募っている時代の仏教学者の提言。大拙氏の言説はその書いた時だけに通じればそれでお終いというのではない。ここのところが誰も真似できない。少しも古びない。この肝を捉えられるかどうか我々の器量、受容力にかかっている。残念ながら我々の言説は心底萎えてその深みに達しえないでいる。我々の言説はことごとく必然的に重く淀むか、軽く雲散霧消するほかない。自由を求めて自ら縛られるというわけだ。そうなっていく時代なのだろう。しかし我々が大拙の言葉に耳を真摯に傾けるなら、違う響きをもつだろう。ひょっとして救いの言葉に軽くなって生きられるかもと。次の二つの禅の言葉を噛みしめて頂きたい。 『平常心是道』そして『大用現前不存軌則』。大拙氏90歳の思考の驚くべき軽ろやかさに是非とも触れ... | ||
トリエステの坂道 (新潮文庫)須賀敦子 ¥ 500 在庫あり。 ★★★★★ |
トリエステの坂道 (新潮文... | |
| 著者はミラノに縁あって根を下ろして生活し、カトリック左派の神父たちが中心になってできたコルシア書店の主要メンバーだったペッピーノさんと結婚。しかし夫は7年少しの幸せな日々の後に、病死した。 国際結婚というのは最近多いけれど、須賀さんの結婚は時代も時代だったが、須賀さんがいわゆる良家の子女であったのに対して、相手のペッピーノさんはイタリアの無産階級といえるような経済的に貧しい家庭環境に成長したという点で、複雑なものもあったようにも思われる。この「トリエステの坂道」においては、夫の家族(狭い意味の家族のみならず、義弟のお嫁さんのお父さんなども含む)がすばらしく生き生きした描写で再現されている。 須賀さんは本当にイタリアで地に足をつけて生活してらしたんだと思う。だから夫が亡くなってからも、イタリアの家族は家族であり続けたのだろうと思う。 作品に触れて感じた須賀さんのものの見方の、少なくても私にとって魅力的なのは、どんな人をも裁いていないということだ。お金持ちも、周囲にとっては迷惑千万だった貧乏な落ちこぼれの人物も、一様にどこか暖かい眼で見て、観察して描き出している。すばらしい教養があふ... | ||
杉浦日向子の江戸塾 (PHP文庫)杉浦日向子 ¥ 620 在庫あり。 ★★★★★ |
杉浦日向子の江戸塾 (PH... | |
| とても愉快な本だった。作者があまりにも嬉々と江戸を語っているので、こちらまでつられて上機嫌に。「目からウロコの一言に対談者は絶句」なんて言葉が背表紙に書いてあるのだけれど、正にその通り。やっぱり、杉浦日向子はいいな! 杉浦氏の著作は、単に物知りというのではなく、 江戸時代の生活に対する哀惜が伝わってくるのが 良い。江戸物は多々あるが、目から鱗的な書は 杉浦氏の右に出る者がいないのではなかろうか。 「一日江戸人」も面白かった。杉浦氏と著名な作家達とのテンポ良い対談を楽しみながら、江戸の勉強ができる本。現代人の日常や価値観と比べて江戸時代の人々の暮らしを語ってくれるので、とてもとっつきやすい。 それにしても、この本に限らず、杉浦氏の本を読むたびに思う事であるが、本当に、夭折が惜しまれる方である。人の勧めで読みましたが、宮部みゆきや北方謙三など著名な作家との対談が一冊にまとまっていて読みやすかった。 言葉の意味が欄外にあるなど、対談では補えない事柄も分かりやすい。 とにかく著者は江戸に詳しすぎる!という驚きと、 江戸というのが、江戸時代のこととだけでなく、江戸時代の「東京」のこととして 詳... | ||
地図のない道 (新潮文庫)須賀敦子 ¥ 380 在庫あり。 ★★★★★ |
地図のない道 (新潮文庫) | |
| 「地図のない道」その一からその三、そして「ザッテレの河岸で」と、水の都ヴェネツィアをめぐる四つの文章が収められている。 たとえば、夫の死や家族の病気を経験した著者が、「道を歩いていても景色が目に入らず、意志だけに支えられて、からだを固くして日々を送っていた」時期におとずれたトルチェッロ島。 ヴェネツィアやリド島のかわいた盛夏を通りぬけてたどり着いた古い教会で、著者は聖母子のモザイク画に出会う。 神秘的な静謐にみちているだけでなく、(わたしの読み落としでなければ)ほかの作品ではあまり書かれることのない、著者自身の信仰をかいま見ることのできる美しい文章だ。 「ザッテレの河岸で」は、コルティジャーネとよばれた高級娼婦たちをめぐる、やや長めの随想。 小説的な文体で、テーマの核心にむけ著者が一歩ずつ近づいてゆくさまが描かれる。 「Rio degli incurabili(なおる見込みのない人たちの水路)」というふしぎな文字に著者が目をとめるところから、随想は書き起こされる。 その場所にはむかし、なおる見込みのない病気、つまり梅毒にかかった娼婦たちを収容するための病院があった... | ||
お江戸風流さんぽ道 (小学館文庫)杉浦日向子 ¥ 600 在庫あり。 ★★★★★ |
お江戸風流さんぽ道 (小学... | |
| 江戸の人々の暮らしを現代に伝える杉浦日向子さんの江戸案内です。 「ごくらく江戸暮らし」と名付けられた第一部の終わりで著者は言っています。 過去から現代そして未来へと暮らしは変化していくが、人々の心は同じである。 江戸の寺子屋の教育の基本は、ただひとつ「禮(れい)」である。 そして、何でもある現代にかけているのは、豊かさを示すと書く、この禮かもしれないと。 重いメッセージです。 未来の我々の子孫の目には、今の時代が豊かで平和な世界に映るのでしょうか。 答えが出るのは百年、二百年先だとしても、現代に生きる我々は何とかしてこの問いかけに 答えていかなければならないのです。 講義録を収録した第二部は、話し言葉でテンポよく、まるで日向子さんの息遣いが聞こえてきそうです。江戸の町人の風俗を思うとき、そこにある種の理想郷があるような気がしてくる。環境問題だとか、リサイクルシステムだとか、食の安全だとか、老後の生活だとかを議論するときに、諸外国のあり方もそうだけど、まず、日本の文化がある意味一番花開いたであろう、江戸の生活様式を振り返って見るべきだと、思うのです。女性が思いのほか強くて、恋愛に関し... | ||
岩波仏教辞典¥ 7,350 在庫あり。 ★★★★ |
岩波仏教辞典 | |
| 割と持ち運びしやすいコンパクトサイズです。まず一冊ほしい方に適した、入門向けで引きやすい総合的な仏教辞典です。しかし、深く掘り下げようと引いてみると、載っていないこともしばしばあります。深く学びたい方にはやや不足があるかもしれません。所行無常・諸法無我・涅槃寂静・一切皆苦などの四法印や、空、無自性等の基本的語句 はもちろん、その他の仏教用語の解説は本当に過不足なく説明されている。 高僧の略歴など簡潔かつ充実した解説が掲載されいる、いわんや他の仏教用語をやである。 仏教を学ぶ方はまずの必携の書であると思う。久々の向学心に燃えて、なんとなく買ってはみたけれど、これは仏教学を学んでいる人(学生さんなど)向けである。 のんびりと寄り道しながら学んでいる一般の仏教ファンには、偉い学者先生が書いた仏教用語の説明は難しくてとっつきにくい。 | ||
なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]鈴木光司 ¥ 735 在庫あり。 ★★★★★ |
なぜ勉強するのか? [ソフ... | |
| 第一章のすべてに通じる理解力、想像力、表現力を読めば、本書の骨格がわかると思います。知識の集積と言っても、ベクトルはこの3要素を伸長させるのが目的であり、知識そのものではないのでしょう。また、親の役割として、「何のために勉強をするのか」子供に理解させることは、勉強が無限の苦痛になることを避けるために、必要なことだと思いました。若干アメリカ礼賛気味ですね。おもしろかったですが、特段鋭い指摘もなく、星3つ。所詮は小説家の書く教育論という感じです。 何より気になったのが、この世代の知識人としてはご多分に漏れず盲目的な欧米贔屓な点。 特にアルマゲドンという映画と特攻隊を引き合いに出して、日本人は若者の命を大切にしていないが、アメリカ人は逆だという筆者の考えを大真面目に語ってる点には思わず失笑してしまいました。 中学生の娘に「なぜ勉強をしないといけないのか」と言われ、「自分のため、社会をよくするため、人の役に立つため」と自信をもって言いました。 これまで、「勉強の意味」を真正面から考えたことがなかったので、自分の見解をはっきりさせるために大変役立ちました。 ところで、その後我が子は猛... | ||
百日紅 (下) (ちくま文庫)杉浦日向子 ¥ 714 在庫あり。 ★★★★★ |
百日紅 (下) (ちくま文... | |
| 単純な線で描かれてるように見えるが、十分に学習した跡が伺えて納得出来る。江戸の空気も描かれてるようだ。 科白に奥行きがあり、再読してみると新たな発見がある。そこがまた楽しみになる。 全集に未収録の二編が収められて嬉しい。 「野分」がとりわけ好き。 もっと多くの人が読んで欲しい名作である。 著者の早逝が惜しまれる。 上巻のつづき── おそるべき描写力であることは本書にとどまらないが、なおかつ長編としての構成力も見せてくれたのはこれが最初で(残念ながら)最後である。もっと多くのテーマが待っていたのに、実に惜しい。生前すでに「漫画」系については“断筆”する旨の表明があったのは、やはり病のためなのか。 本書は、日本人すべての、しかも「大人のための」座右の書として親しんでほしい。十年ごとに読み返すと、また新しいものが見えてくるはずで、青年も、そしてもちろん老年になっても何度でも楽しめること請け合いだ。 其の十八『酔(すい)』に、酒豪で知られた花魁、滝山と、歌川国直の酒合戦が描かれていますが、これが秀逸。 北斎の居候、池田善次郎から酒合戦の誘いを受けますが、その場では「おいら師匠と禁酒... | ||